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田舎暮らしの概念が変わる~伊藤洋志×pha共著『フルサトをつくる』

「憧れ」の田舎暮らし、「老後」は田舎で。

人からもよく聞く夢、書店の雑誌なんかにもよく見る題目。

しかし、本当に田舎暮らしは、憧れや老後にするものなのだろうか。都会を離れないと田舎には住めないのだろうか。そういう、重大な覚悟が要求されるものなのだろうか。

 割とカチコチに考えがちな、田舎暮らしの常識を打ち壊してくれる提案の書が、伊藤洋志さんとphaさんの共著である『フルサトをつくる』だ。わざわざ「骨を埋める覚悟」を持たなくても、わずかな資金さえあれば田舎には住める。

伊藤さんの前著『ナリワイをつくる』に強く感銘を受けていた。サービスや消費に依存せず、自分の生活を自分自身の手でつくっていく、という考えに基づき、それを仕事「ナリワイ」にしてしまおうという。伊藤さんはこの本で「そもそも、~は本当に必要か」という考え方を多用しているのが印象的だった。世の中にあふれるサービスや商品に対して、そもそも…と考えてゆくと、実際必要なモノはそんなにないのだ。

そして、そのサービスを自分自身でやってしまう、商品を自分自身でつくってしまうことが、ある意味では最強のリスクヘッジであると述べられている。例えば、物流が完全にストップしてしまった時に、庭のプランターで野菜をつくれる人と、作り方を知らない人では、これは雲泥の差である。3.11後だからこそ、この考え方が切実に感じられるのかもしれない。

「フルサトをつくる」でも、このナリワイの考え方が根底ある。

そもそも、骨を埋める覚悟が無ければ田舎には住めないのか?答えが否であることを本書は証明してる。いわゆる「第2拠点」的な位置づけである。
本書では、熊野で実際に進められた例をもとに書かれており、住居確保の方法や、物件のチェックポイント、さらには地域コミュニティーとの関係を築く方法まで書かれ、手引きともいえる内容になっている。

章ごと交互に伊藤さんとphaさんが執筆しており、このコントラストも面白い。伊藤さんは、さすが過去の豊富な経験を踏まえて、実践的・実際的な視点で書かれておりイメージが容易に湧く。

一方、phaさん章は伊藤さんに比べると「ゆる~い」。phaさんは伊藤さんに誘われる形で参加したという。都会から田舎という環境の違いに、いろいろ発見や楽しみを見出していく様が非常に新鮮だ。

 

田舎暮らしを考える人は、読む価値はある。田舎暮らしだけでなくて、都会で暮らす人にも示唆に富んでいると思う。都会というのは、外部からの供給なくして成り立たないもの、供給物を得るには対価として銭が必要なのは言うまでもない。しかし、「フルサト」はそういう都会の状況に対して、供給がストップしても「フルサト」で生き延びることができるという、ある種のバックアップ環境を用意するということもである。

 

緊急時のバックアップだけでなく、日常的にリフレッシュやレジャーの拠点にもなるし、コミュニティをうまく作れば、その可能性の広がりは無限大に感じられる。「フルサト」は非常に大きな可能性を秘めている。

そして、そのハードルは決して高いものではないことを本書は教えてくれる。