ライフワークを考えるオススメ書籍4選

「ライフワーク」に対して「ライスワーク」という言葉も聞かれる今日この頃。

やりたいことを仕事に、やりがいあることを仕事に、そういった主張の自己啓発本も書店に行けばたくさん並んでいて、また多くの人が実際そういう希望を持っている。もちろん私も。

 

今回紹介する本は、ライフワークを考える上で、私自身が読んで強い感銘を受けた本。

ライフワークの見つけ方というようなハウツー本ではなく、実際に「ライフワーク」と呼べる仕事をされ、素晴らしい実績や評価を残している人の自叙伝的な著書である。
書かれていることは、単なる仕事論にとどまらず、その人の生き様とも感じられる。生き様としての仕事は、まさにライフラークと言えるもの。
長いスパンでの自分自身とっての生きるテーマ、モチーフを考える上では、とても優れた読み物ではないかと感じている。

 

これらの本、私にとっては高校生の時に出会ったら人生が変わっていたかもしれないと感じる本である。もっと若い頃に出会えたら…といっても後の祭り、人生今日が一番若い。

 

1、小澤征爾『ボクの音楽武者修行』

日本を代表する指揮者の小澤征爾さんの若い頃の著書。自らの生い立ち、ヨーロッパを単車で駆け抜け、コンクールでの優勝、カラヤンバーンスタインとの出会いなど経て、日本への凱旋までを語る。クラシック音楽の素養なんかなくても一気に読ませてしまう自叙伝だ。
小澤さんの人柄のようなものが滲み出ており、素晴らしくフレッシュでエネルギッシュ。若いときの勢い、何かを一生懸命やること、打ち込むことの魅力にあふれている。また印象的なのは、タイミングを見計らったように良い師が現れること、いい師との出会い、これもライフワークを獲得すること、そして成功のカギを握っているのではと感じる。

本の終わり、バーンスタインと共に日本に凱旋し、飛行機から降りてきて、出迎えた小澤さんの家族をバーンスタインに紹介するシーンは、何度読んでも涙が出る。

 

2、宮本常一民俗学の旅』

宮本常一という民俗学者は、おそらく一般にはあまり知られていないだろうと思う。一番有名な著書は『忘れられた日本人』、中でも「土佐源氏」がとりわけ有名かもしれない。

この『民俗学の旅』は氏の自叙伝。
読んで感じるのは、自らのおかれた環境をどう捉えるか、その環境や社会に対してどういう問題意識を持つかという点、その視座もライフワークの原点たりうるということだ。自分なりの問題意識を持つこと、それを深く掘り下げることが結果としてライフワークとなり、氏の偉業の原点であったのだと思う。
また、宮本氏も渋沢敬三という素晴らしいメンター、パトロンを得たことが、終生の旅と膨大な資料の集成を成し遂げるために不可欠だったと言える。この点、上で紹介した小澤氏と共通して、良い師に出会うことがいかに人生を変えるかを如実に示していると思う。

あと、この本に記されている宮本氏の父・善十郎の10つの言葉が素晴らしいのでこれもぜひ読んでみてほしい。

 

3、星野道夫旅をする木

 「好きなことをして生きていく」、これを徹底的に掘り下げ、独自の境地に達したのが写真家であり文筆家でもある星野道夫だと思う。アラスカへの興味から、アラスカに根を下ろし、人々と自然の関わりを深く探求していくことになる。
1枚のアラスカのシシュマレフ村の写真という小さなきっかけで、その村長宛に「村で過ごしたい」という1通の手紙を送ることから始まった。とにかく気になることに対して行動を起すこと、深く掘り下げていくことの大事さということが特に伝わってくる。

そして、自分が大切だと思うこと、好きだと感じることを深く追うこと。その比類ない文章や写真作品も大変素晴らしいが、星野氏自身の、自然へのまなざし・関わり方、生きざまは多くのことを問いかけてくるように思う。

自分にとっての当たり前を追求して繰り返していくことは、実はとても非凡なことなのだ。

 

4、中村哲『天、共に在り』

常に問題の本質を見極ようとする姿勢、そして逃げずに粘り強く、誠実に人々と向き合う姿勢が、本書の随所から伝わってくる。深く見つめ行動すること、それ自体は小さなことでも、それを継続することが最後には大きな結果となる。

深追いすること、どっぷりはまること、ある種の覚悟を持つこと、こういったことが、ライフワークのコツといえるかもしれない。

yas443.hatenablog.jp

以前、書いた感想もぜひお読みいただけたら幸い。