2014-01-01から1年間の記事一覧

史実と現場感覚を追求した歴史小説『HHhH』

できるだけ主観を排して、歴史の現場に立ち会わせてくれるという変わった歴史小説。 ローランド・ビネ著『HHhH プラハ、1942年』は、2010年ゴンクール賞最優秀新人賞受賞、2014年本屋大賞翻訳小説部門第1位と、軒並み高評価を受けているキラキラした小説であ…

複雑に、そして深い人間の因果を描く『優駿』

長い間放置してしまった。 ろいろともがいているのだけれど、もがけばもがくほど深みにはまるというか、木々を詳しく調べることに一生懸命になり、なんという森かを忘れてしまう。そういう人生の深み、あるいは淀みにはまっているのであります… さて、昨日一…

田舎暮らしの概念が変わる~伊藤洋志×pha共著『フルサトをつくる』

「憧れ」の田舎暮らし、「老後」は田舎で。 人からもよく聞く夢、書店の雑誌なんかにもよく見る題目。 しかし、本当に田舎暮らしは、憧れや老後にするものなのだろうか。都会を離れないと田舎には住めないのだろうか。そういう、重大な覚悟が要求されるもの…

人にとって「故郷」は唯一無二~水上勉『故郷』

東日本大震災は、地震や津波という破壊ではなく、放射性物質による汚染という形で「ふるさとを失う」という、考えたこともなかったような不幸が福島を襲った。この福島の方々の悲嘆を見て、自らも「ふるさと」について考えたり、想ったりした人はきっと少な…

好きなんだけど

先日、ある鉄道好きの人が話していたことに、強い違和感を感じた。その人は、ある車両が好きなのだけど、その車両は一般的には勝手が悪くて、利用者の評判が良くないからあまり走って欲しくない、という話をしていたのだ。 この人は自分の嗜好と一般の評判が…

サードマンは人間の知られざる本能?『奇跡の生還へ導く人』

以前、朝日新聞で掲載された高野秀行さんと角幡唯介さんの対談で興味を持った本を読んだ。 ジョン・ガイガー著『奇跡の生還へ導く人 極限状況の「サードマン現象」』 単行本版を購入して読んだのだが、つい先日(先月末)文庫本化されていたようで、このタイ…

レビューと自分の耳

音楽、とりわけクラシック音楽にのめり込み5年ほど経ったが、改めてその世界の深さに驚く。 クラシック音楽で最初に関心したのは、同じ曲でも指揮者で全く演奏が変わることということである。「指揮者なんて誰がやったって一緒でしょ?」というのは、クラシ…